ワクワクを


村上T 僕の愛したTシャツたち

村上T 僕の愛したTシャツたち

 

 本屋で初めて見たときは、パラっとめくっただけで、まああんまり中身なさそうだし、、、と

思えて、買わないでいた。

 

私は村上春樹ファンである。

大学1年生19歳の時に『ノルウェイの森』に出会って、売れているという理由も結構影響したように思うが、上下まとめて(当時の私は全巻まとめて買うことを当たり前に考えていた)買った。

 

19歳当時、私が本を購入するなどということはまずなかった。

高校生までに買った本は数えるほどしかなかった。コロコロコミックドラえもんは面白くて全部買って読んでいた。本当に読みたい本は両親に頼んで買ってもらった。旺文社『日本の歴史』は私の長い間の愛読書だった。これも旺文社だったように思うのだが、『世界人名辞典』は繰り返し繰り返し読んで、ボロボロになった。私は本当に読みたいものしか手元に置かず、それを繰り返し繰り返し読んでいたのだ。

 

大学1年生になって、唯一購入した書籍はレヴィ=ストロース『野生の思考』だった。これは大学内の本屋で買った。

だから、私の小さな大学宿舎の部屋の棚には、『野生の思考』と『ノルウェイの森』が並んでいただけだった。

この2冊が私の唯一の蔵書であり、その後、書物を買うことはほとんどなかった。

 

さて、村上春樹のTシャツ小噺を集めた『村上T』は、一度気に入ってしまうと、買ってよかったと思える本である。

まず、本の装丁が凝っている。カバーのザラッとした手触り、本体も似たようなザラッと感でホッと落ち着く。本の大きさも大きくなく小さくなく、両手に収まる程よいサイズであり、手に取ると親しみが湧いてくる。

 

私は過去のワクワクする体験を手放してはいないだろうが、現在では、安易に権威や噂に流されて本を購入している向きもある。

自分に正直にならなければならない。

ドラえもんを読んだ時のワクワク感、日本の歴史を読んだ時のワクワク感。それを手放してはいけない。

 

『村上T』も今では手に取るとワクワクしてくる。コンパクトにTシャツの写真と文章が1冊にまとまっている。